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中間領域の未来 縁側ストラクチャー ⑩

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2023年9月1日
  • 読了時間: 4分

【内容】

1.「より内側で、より私的な中間領域」づくり

2.中間領域におけるソフトづくり

3.柔らかく優しい都市空間づくり


1.「より内側で、より私的な中間領域」づくり

「敷地の中は自由に使えるけれど、敷地外(公共スペース)はお上のモノで、利用してはいけない」という日本人の空間意識は、戦後のモータリゼーションの浸透で、一層定着してしまいました。

高度成長社会であれば、都市環境の質を担保するためには、「開放性とゆとり」が重視されるこの方針で良かったのですが、「賑わいと魅力アップ」とが求められる成熟社会では、この「公共スペース=無関心・無関係」意識は、大きなハードルになってしまいます。

公共スペースの利用に慣れていない上に、利用するには誰の許可を得れば良いかが不明確なため、一部の批判者の声を恐れて、お互いに遠慮し合っている状況です。

このような状況を踏まえると、日本人が公開空地などを含む公共スペースの利用を促すためには、「より内側、より私的な中間領域」づくりが、有効なのではないでしょうか。

アオーレ長岡のナカドマの利用性と居心地は偶然ではないと思います。

亀戸サンストリートのように、商業施設などにおける開放的で寛容な私的スペースの方が、管理者もはっきりして利用しやすいかも知れません。

オフィスや商業施設の建築がますます巨大化し、圧迫感を増す状況で、複合都市開発が「マチ屋根ひろば」などを設けて、中間領域の居心地を担保する計画を進める動向は、理にかなっていると言えます。


2.中間領域におけるソフトづくり

中間領域におけるアクティビティを促すには、マチ屋根などを設え、物理的に「内側感や私的感」を醸し出すと共に、ソフトな仕掛けが重要です。

街なかでいきなり自己表現を始めたり、他人に声がけして交流出来る人は少ないと思いますが、話のきっかけになる共有体験があるとスムーズです。

連れている犬や子どもがマグネットになったり、イベントや大道芸が共有体験として有効ですが、街づくりの定常的な仕掛けになるのが、パブリックアートではないでしょうか。

西新宿のアイランドタワー前の広場に設置された「LOVEモニュメント」は SNSの背景になることで有名ですが、街の中にコミュニケーションのフックとなるパブリックアートが散りばめられていると素敵ではないでしょうか。

さらにソフトな仕掛けとして「シブヤ大学」があります。

「シブヤ大学」は NPO法人が運営する社会人大学ですが、「渋谷の街をキャンパスにして学ぶ」と言うコンセプトが、評判を呼び普及していきました。

座学のカルチャー教室ではなく、街中の様々な場所を教室化して「授業」を開催したり、気のあったもの同士で「部活やサークル」も出来ますし、「学食」の設定も可能です。

そして大学ですから、学生や研究室での「社会実験」と位置付けることで、「さまざまな変わった行動」に対しても、周囲の目が寛容になることが期待できます。

大学見立てだけでなく、ミュージアムでも良いですし、学会見立てでも良いのです。

中間領域にソフトな仕掛けがあると、通行人、消費者としてだけでなく、個人として利用し、交流・関係を作りやすくなるのではないでしょうか。


3.柔らかく優しい都市空間

亀戸サンストリートの広場には、「夏休みに、女子高校生の二人組が、水着で甲羅干しをしていた」というエピソードがあります。

この二人にとって、サンストリートの広場は、安全で、居心地の良い場所だっだのだと思います。

マチ屋根ひろばの下で、子供たちが走り回っている。高校生が宿題をしている。お年寄りが昼寝をしている。ストリートダンスの練習をしている。そんな「縁側のような」柔らかく優しい都市空間が、「縁側ストラクチャー」の未来イメージです。

組織や社会を変革する際に「賛同者2割、抵抗者2割、残りの6割はどちらでも良い人達」と言われます。

公共スペースの活用においても、積極的な2割の賛同者だけでなく「残り6割」に対して如何に背中を押せるのか?が大切だと考えます。

公開空地を含む都市の公共スペース計画には、造園計画だけではなく、準建築的な居場所づくりに加えて、ソーシャルデザイン的な要素も必要かも知れません。

巨大化する都市における、縁側ストラクチャーの計画には、「一種のリハビリ」スタンスで、空間的かつ社会的な居場所づくりが、求められているのです。

 
 
 

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