top of page

中間領域のベンチマーク 縁側ストラクチャー ④

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2023年8月18日
  • 読了時間: 3分

【内容】

1.ジョン・ジャーディの中間領域

2.トーマス・ヘザウィックの中間領域

3.隈研吾の中間領域


遠慮しがちな公共スペースでのアクティビティを活性化させる中間領域の設えのベンチマークとなる事例をいくつか整理したいと思います。


1.ジョン・ジャーディの中間領域

米国サンディエゴのホートンプラザや、日本でも六本木ヒルズ、難波パークス、博多キャナルシティなどの設計を手掛け、「フェスティバル・マーケットプレイス」というコンセプトの環境デザインで一世を風靡しました。

建物を「街」に見立て、雑然さを人工的に再現しました。

来街者が、街全体を回遊して何度でも楽しめ、歩くたびに景色が変わるように、わざと見通しを悪くしたり、床や天井のパターンを変えたり、周遊させる場所を設けたり、緩やかにカーブする動線などがデザインされています。

六本木ヒルズで手がけた、低層部のメトロハット、カスケードのあるパーゴラ、展望台への入り口パビリオン、ヒルズアリーナなど、一般的なビルディングとは異なるスケールと機能の建築物が、賑わいと居心地の良さを演出しています。


2.トーマス・ヘザウィックの中間領域

森ビルが開発する「麻布台プロジェクト」の低層ゾーンをデザインするトーマス・へザウィックも、建築の枠に囚われない建築家で、ベンチマークになるのではないでしょうか。

「タンポポ」の愛称がついた上海万博英国館では、大英帝国が集めた世界中の「種子」を、10万本のアクリル棒に封じ込めて、パビリオンを形成しました。

エリザベス女王の在位70周年記念行事のための「Tree of Trees」や、ニューヨークのハドソンヤード開発における「ヴィッセル」などでも同様に、人々の「愛着を反映させる小さなパーツ」を開発し、無数に組み合わせていくことで、共感を醸し出していく手法を駆使しています。


3.隈研吾氏の中間領域

国立競技場を設計した隈研吾氏も、中間領域づくりに長けた建築家だと考えます。

アオーレ長岡のナカドマは、雪国において天候に左右されることのない半屋外の広場空間です。

巧みなトップライトが木漏れ日のような光を投げかけ、地場産のスギ材ルーバーが、巨大な空間でも、民家のような居心地の良さを醸し出しています。

京王高尾山口駅の木の大屋根は、日常の世界と聖地との結界であり、鉄道という近代のインフラと、大自然とのボーダーとして機能しています。

高尾山の行燈からヒントを得た照明が柔らかい光を投げかけています。

隈研吾氏は「ノイジーな存在の人間だから、ノイジーな空間を求める」と、コメントしているように、公共スペースとして開放するのであれば、ノイジーな要素をきめ細かくデザインしていくことで、利用性が高まるということをよく理解しているのだと考えます。

 
 
 

最新記事

すべて表示
都市の拡大と分断 「関わり資本」による都市再生 ②

【内容】 第1章 歴史と生活が息づく「旧市街」の誇り 第2章 新市街の台頭と「都市の分断」 第3章 郊外化と「三重の分断」     第1章 歴史と生活が息づく「旧市街」の誇り 日本の多くの地方都市は、城や寺社を核として発展してきた旧市街を起点としています。...

 
 
 
人口減少時代の都市再生 「関わり資本」よる都市再生 ①

【内容】 第1章 新潟市における都市再生の挑戦:「にいがた2km」構想とは 第2章 展望:経済・文化・市民参加による都市の再構築 第3章 人口減少時代の都市再生     第1章 新潟市における都市再生の挑戦:「にいがた2km」構想とは...

 
 
 
Jカルチャーコンプレクスの未来 Jカルチャーコンプレクス ⑩

【内容】 ファッションビルの限界と未来型への進化方向 未来型ファッションビルの施設構成と運営体制 Jカルチャーコンプレクスがもたらす日本社会の未来     1.ファッションビルの限界と未来型への進化方向 近年、従来型ファッションビルは、大きな曲がり角を迎えているといえます。...

 
 
 

Comments


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page