【内容】
恵比寿ガーデンプレイスと写真美術館の特性と課題
目指すべき産業クラスターイメージ
文化都心マネジメントの方向性
第4回は文化都心マネジメントの「ミュージアム」におけるケーススタディです。
サッポロ不動産開発の協力をもとにして、「恵比寿ガーデンプレイスと東京都写真美術館」を具体事例として検討します。
1.恵比寿ガーデンプレイスと写真美術館の特性と課題
1890年に「エビスビール」が発売され、その積出駅としての停車場の名称が、「恵比寿」の町の名前として定着したという経緯があります。
1988年に工場が閉鎖され、1994年に恵比寿ガーデンプレイスとして生まれ変わります。
恵比寿ガーデンプレイス(以下 YGP)は、約8.3haという敷地に「ワンランク上の豊かな生活を実現する」ことをコンセプトにして、オフィス、商業施設、美術館、ホテル、ホール、映画館、住宅などが一体開発された「元祖 複合都市開発」と言えるプロジェクトです。
都市部にありながら職住遊が混在し、ゆとりを感じられる街としての特性を備えている一方で、六本木ヒルズなど後発の複合都市開発の誕生で、プレゼンスの低下も否めません。
住みたい町ランキングでは常に上位に位置し、食を楽しめる町としての生活イメージが確立している一方で、恵比寿ならではの企業集積の色がないことも課題です。
また東京都写真美術館(以下写美)は、世界的にも珍しい写真・映像を専門にする美術館です。
各種展覧会の開催のほか、資料収集・調査研究や教育普及事業などの多彩な活動を行い、毎年「恵比寿映像祭」という国際アートフェスティバルも開催しています。
展示、上映、ライブ・パフォーマンス、トークセッションなどを複合的に組み立て、地域連携プログラムでは、恵比寿ガーデンプレイスはもちろん、近隣のギャラリーなどとテーマを共有し、イベント企画を実施しています。
写美の期待としては、「ワーカーや住民との接点を増やすことができないか」「情報発信により恵比寿の街のイメージを増幅・醸成できないか」「街への集客力を上げることができないか」などが挙げられます。
2.目指すべき産業クラスターのイメージ
恵比寿の強みと産業特性についてディスカッションしたところ、「広域渋谷圏の奥座敷」「恵比寿を拠点にすることで、物語とスタイルを纏うことができる企業」「質の高い恵比寿の生活者に受け入れられる商品・サービス」などの意見が出てきました。
総括すると、特定の産業分野ではなく、「toCに向けた商品・サービスをエビスで磨き上げる、スタイルのあるスタートアップ企業」に対してのブランディングが有効だということです。
恵比寿には目黒川の水資源を生かして、ビール工場をはじめとして、食品やアパレル産業が根付いていました。
こういった地場産業を活かした「LIFE UPをテーマにした産業クラスター」がイメージできそうです。
3.文化都心マネジメントの方向性
文化都心マネジメントを展開していくためのリソースとして、下記の3点が挙げられます。
街レベル:安心感のある大人のコミュニティ
YGPレベル:エビスビールの伝統とゆとりある空間
写美レベル:恵比寿映像祭の開催実績
これらを活かして、「恵比寿LIFE UP映像祭」として、アップデートしてはどうでしょうか。
街レベル:写真心理学を生かしたビジネスマッチング
YGPレベル:写真と街の歴史や物語を紡ぎ出すメタ観光マップ化
写美レベル:チームラボ的なテクノロジー要素を加えたシン恵比寿映像祭
上記の活動に加えて、「LIFE UP産業協議会」の発足も有効です。
これらの施策を駆使することで、恵比寿の街は、渋谷でも五反田でもない、新しい産業クラスターの形成が標榜できると考えます。
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