【内容】
国内のライブミュージアム事例の研究
視点としては、まずホール系文化施設に付帯したミュージアムを検証し、続いて音楽や演劇などのライブエンタテイメントをテーマにしたミュージアムを調査します。
具体的な国内事例は、下記の6事例です。
東京文化会館音楽資料室
歌舞伎座ギャラリー
野球殿堂博物館
早稲田演劇博物館
古賀政男音楽博物館
類例施設として宝塚歌劇オフィシャルショップ
1.東京文化会館音楽資料室
上野駅前の公園入り口に建つ東京文化会館には、売店や「音楽資料館」が併殺されています。
ロビー脇に、音楽モチーフのグッズを扱うセレクトショップ「Wsltz」と、和風の手作りグッズを扱う「タクト」がありますが、ホールに付帯した売店レベルの規模で、日常的に利用されている様子はありません。
4階にある「音楽資料館」は音楽専門の図書館で、音源73,000枚、楽譜34,000冊、書籍20,000冊と充実した内容ですが、動線の関係もありあまり利用されていません。
音楽関係者が、調べ物などの研究目的で利用する施設になっています。
2.歌舞伎座ギャラリー
歌舞伎座タワーには、歌舞伎座だけでなく、5階に「歌舞伎座ギャラリー」があり、舞台で使用された大道具や小道具に触れる事ができます。
それ以外にも、4階に歴代の歌舞伎俳優の舞台写真が並ぶ「四階回廊」がありますし、地下には地下鉄駅に直結した「木挽町広場」があり、歌舞伎座の直営ショップやお食事処、甘味処のほか、歌舞伎俳優の本やDVD、歌舞伎グッズやお土産の屋台が並び、縁日のような情景が広がり、賑わっています。
歌舞伎座には育成施設も併設されており、複合文化施設として、日常的な賑わいづくりに成功した事例といえます。
3.野球殿堂博物館
この博物館は東京ドームの地下にある野球の専門博物館です。
プロ・アマ問わず国内外の野球に関する資料を収集・展示しています。
年一回表彰される功労者たちの肖像レリーフが並ぶ「野球殿堂」や、WBCやプレミア12などの国際大会の資料、プロ野球12球団の現役選手の用具などが展示されています。
2023年WBCに優勝したこともあり、予想以上に来館者はあるのですが、外国人向けの解説不足や、グッズ売り場を充実させる必要性などの課題があります。
※東京ドームに近接する新日本プロレスの「闘魂ショップ」の方が、レスラーを多面的に扱ったキャラクターグッズなどが、充実していました。
4.早稲田演劇博物館
早稲田大学構内にある演劇・映像専門の総合博物館です。
坪内逍遥博士の発案で、イギリスの「フォーチュン座」を模した建築様式で、100万点に及ぶコレクションを元に、世界の演劇・映像文化史を紹介する常設展と年2回(2024年7月:越路吹雪衣装展)の企画展を開催しています。
学術研究に寄り過ぎている点、施設が古く細切れで回遊しにくい点、カフェやショップなど滞留環境がない点などが勿体無いと思いました。
本来であれば、国立・都立レベルで扱うべき分野とテーマの文化施設ではないでしょうか。
5.古賀政男音楽博物館
代々木上原のJASRACオフィスに隣接した音楽博物館です。
生涯に3000曲を作曲したと言われる古賀政男は、代々木上原に音楽家を集めた音楽村を作ろうとしたそうです。
古賀政男の自宅を再現すると共に、日本の大衆音楽文化に貢献した作詞家、作曲家・歌手などを顕彰した「大衆音楽の殿堂」もあります。
そのほか古賀メロディをはじめ8,000曲の音楽を視聴できたり、カラオケで歌ってオリジナルCDに録音できるスタジオサービスもあります。
6.宝塚歌劇オフィシャルショップ「キャトルレーヴ」
東京宝塚劇場に隣接する日比谷シャンテ3階にある宝塚歌劇のグッズショップです。公演グッズに加えて、宝塚スターの書籍・DVD、オフィシャルグッズ、ブロマイドなどを扱っており、宝塚ファンで賑わっています。
国内事例に共通しているのは、ホールの付帯施設的な位置付けで、設けられているため、規模・立地ともに、日常的な賑わいづくりに資する施設にはなっていないのが現状といえます。
その中で特筆すべきは歌舞伎座で、「歌舞伎のメッカ」に相応しく、公演会場だけでなく、育成・展示・滞留・休憩・土産物までが揃った、ワンストップ複合文化施設になっています。
ホール系文化施設のサードプレイス化のロールモデルになると考えます。
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