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ソフトのシェア 歴史まちづくり ⑧

【内容】

  1. 空間限定のシェア

  2. 時間限定のシェア

  3. ライトにシェアする

1.空間限定のシェア

アーティストのアサダノボルさんが提案する「住み開き」や、まちづくり家の磯井純充さんが提唱する「まちライブラリー」の考え方が参考になると思います。

「住み開き」とは、自宅の一室を趣味のミュージアムやギャラリーとして開放することで、街と関わりを持つ手法です。

常設ではなく、曜日限定で運営している事例もありますが、自分の好きな絵や写真を飾って、お客さまを迎え入れると思うだけで、部屋や軒先を掃除したり、身だしなみに気をつけるようになると言います。

「まちライブラリー」も同様に自宅やお店の一部をライブラリー化する手法です。

参加者が好きな本、読んでほしい本を持ち寄る仕組みで、それぞれが自分の表現ツールとして本を活用することで、アートよりもハードルが低くなり、幅広い人たちの参画が期待できます。

歴史まちづくりへの工夫として、家全体、外観のハードの保存を前提にしてしまうと、ハードルが高くなってしまいます。

一部の空間を限定的に活用し、伝統工芸、芸能を含む歴史資産を展示・開放していく活動にすることによって、幅広い人たちが関わることが可能になります。


2.時間限定のシェア

「オープンファクトリー活動」とは、普段は作業していて危険なため、立ち入れない工場を、期間限定で開放するもので、燕三条の「工場の祭典」をはじめとして、各地で盛んになってきています。

「工場の祭典」は10年目になります。

回を重ねるごとに盛り上がりを見せ、2023年には90社弱の企業が参加し、5−6万人のお客さまを迎えるイベントに育っています。

以前、アメリカの設計事務所を訪問した際に、設計図だけでなく下書きであるスケッチまでよく保存されていることに驚きました。

マスター建築家だけでなく、一般のスタッフまでが、自分のスケッチを丁寧にファイリングしていて、こちらの質問に対して、設計意図などを誇らしげに説明してくれるのです。

日本人の謙虚さかもしれませんが、日本の工場に最も欠けているのが、この「実績をプレゼンする姿勢」だと思いました。

人を迎え入れる意識などなく、とにかく作業場として「機能すれば良い」と言う環境づくりに留まっています。

このように年に一度くらい、自分たちの生活環境や作業場に、人を招き入れ、自分たちの営みについて説明・披露する機会をつくるというスタンスは、有効ではないでしょうか。

それは、身を置く環境に関心を向け、自らの暮らしと仕事に対する誇りを持つ機会になると思います。

3.ライトにシェアする

いずれも、歴史まちづくりから少し外れた事例ですが、その街に「根付くソフト」を維持・継承する方策として参考になるのではないでしょうか。

歴史まちづくりにおける次の課題は、「地域に残るソフトの維持・継承」だと言うことが明らかになっています。

「本業」として続けることが難しいようなら、上記のように「限定でシェア」する方法が有効だと考えます。

建物全体ではなく、「一部屋だけ」でも良いので、残し活用して披露するのです。

常時ではなく、「年に一度だけ」でも良いので、人を招き入れて披露してみませんか。

このようなライトな保存スタンスから始めることで、「自らの歴史・文化の大切さ」を実感し、やがて経済価値と文化価値とが逆転する中で、より高いステージでの歴史保存につながると考えます。


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