【内容】
街づくり関係者がコミットできる評価指標はないのか?
エリアマネジメントの限界
街づくり関係者の困りごと
1.街づくり関係者がコミットできる評価指標は無いのか?
2021年に私たちの研究会の検討会議で「行政から容積ボーナス以外のインセンティブが無いか?と相談を受ける時代になっている。新しい街づくりの評価指標が必要なのではないか?」という意見が提示され、これに多くのメンバーが共感する場面がありました。
確かに、森記念財団が発表する「世界の都市総合力ランキング」は毎年話題になりますが、東京をニューヨークやロンドン、パリと比較しても、民間ディベロッパーを中心とした街づくりに関係者には範囲が広すぎるため、コミットのしようが無いというのが実情です。
また SUUMOが発表する「住みたい街ランキング」も毎年話題になります。
こちらは駅を中心にした街を対象にして親しみやすい範囲なのですが、「あなたが今後住んでみたいと思う街(駅)はどこですか?」という簡単なアンケートの集計結果ですから、改善方策が不明でやはりコミットのしようが無いと言われます。
指標とは「物事を判断したり評価したりするための目印となるもの」と定義されます・従って指標を作る目的は「人々の行動や社会を良い方向に導くもの」であるべきだと考えます。
街づくりにおいても、街単位で、改善方策の参考になる、民間の街づくり関係者がコミットできる評価指標が必要ではないでしょうか。
2.エリアマネジメントの限界
2000年頃から街の活性化の切り札としてエリアマネジメント(以下エリマネ)という考え方が積極的に導入されるようになりました。
ショッピングモールのように街を一つの事業体と見立てて、防犯・美化をはじめ、情報発信や賑わいづくりなどを共同で推進していく試みです。
都市再生特区を適用する開発事業においては必須項目となり、容積ボーナスと引き換えに事業主体のディベロッパーを中心に、地域連携を模索する活動が推進されてきました。
先行事例とされる欧米の都市で、エリマネが導入された背景には、防犯や美化という喫緊の課題がありました。
BIDという対象地域を設定して、地権者たちが「街の共益費」という名目で拠出した資金をもとに治安・美化活動することで、地域の価値を向上させるという明確な意義があった訳です。
一方 日本の都市の場合は、安全や清潔が所与の条件になっているため、エリマネは主に地域活性化のための「イベント屋さん」という認識が定着してしまっているようです。
そしてディベロッパーの開業準備金が枯渇するにつれエリマネの原資も減少し、「イベント疲れ」とも相俟って、活動が尻すぼみになっていく事例が多いようです。
ある企業幹部は「エリアマネジメントと言っているけれど、コストセンターになっているだけで、本当の意味のマネジメント(=経営)はしていないよね」と辛口の批評をしています。
エリマネには自律的に価値創造していく視点と仕組みが不可欠なのです。
3.街づくり関係者の困りごと
上記のような背景で、街づくり関係者は、まちづくりの効果測定の方策を模索していると言う状況です。具体的には下記の3点の評価を求めています。
経年評価
商業施設などのハードが開業すると目に見えて人が増えますが、いろいろなイベントを開催しても、どれぐらい活性化しているのか?がわかりません。
ソフトな街づくりの工夫が、経年評価できる指標が求められています。
相対評価
自分たちの街の個性や特徴を把握しようとして、アンケートやワークショップを行いますが、自分たちの街だけを見ていても、他との違いがわかりません。
アニメ?グルメ?健康?子育て?など、他の街と差別化できる特性を可視化するための、相対評価が求められています。
総合評価
エリマネの報告書はあるけれど、その内容は実施したイベントなどの活動報告と、それに伴う実施費用の計上だけの場合が多いようです。
街がどう良くなっているのか?わかりやすい総合評価が求められています。
ハードな都市整備だけでなく、経済合理性や利便性だけでなく、街づくりのソフトや文化性を総合的に評価できる指標づくりが求められているのだと考えます。
このような認識をもとにFIACS では、「エリアクオリア指標」を開発しました。
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