【内容】
欧米で拡大する亜―バンファーミング
アーバンファーミングの作り方
アーバンファーミングの効用
1.欧米で拡大するアーバンファーミング
身体性を拡張する施設として提案するのが「アーバンファーム」です。
ビルの屋上やベランダを活用した農園なのですが、大都市でも3階以上になると排気ガスの影響も少ないといわれ、パリやニューヨークなど世界の都市で増加中です。
特にパリでは、将来的には100ヘクタールをアーバンファームにすると言う目標のもと、バスティーユ・オペラ座(5000m2)や名門料理学校「ル・コルドン・ブルー(800m2)」などの屋上が活用されています。
料理学校のプログラムとして、屋上農園を活用して、調理コースには野菜栽培、製菓コースには果物栽培を学び、作物の特性や栽培法はもちろん、都市農業の意義を教えています。
東京23区の屋上の総面積は4,917ha(東京23区における屋根面積の実態把握と屋上緑化可能面積の推計:2004)という膨大な数字で、江戸川区(4,990ha)相当の屋上で、ニンジン、小松菜、ダイコンやルッコラ、パクチーなど多彩な野菜が栽培可能だと言うことになります。
2.アーバンファーミングの作り方
アーバンファーミングは、設置場所によってさまざまな作り方があります。
カフェ・レストランのベランダでは、プランターなどを活用し、シェスヤスタッフが主体となって、植栽の日々の管理を行うとともに、菜園で育てたハーブや野菜を料理に利用しています。メニュー考案やワークショップなどに店舗のテーマが反映されます。
より大規模なビルの屋上菜園では、灌水は雨水を、地表の温度管理には建物の排熱を活用し、建物内での生ゴミを肥料にする循環型農業が採用されています。
会員制の維持管理となり、会員が主体となりながら、スタッフがバックアップして栽培・収穫します。
手袋・長靴・スコップなどの農具の収納スペースがあり、レンタルされます。また農園の一角には、養蜂家が管理するミツバチの巣箱も設置されることがあります。
横浜にある商業施設「マークイズ」の屋上菜園は、コミュニティを育む場として検討されました。一般的な区画貸出型の菜園では、家族単位で一区画を利用してしまいます。より多くの利用者が楽しめるように、菜園を活用して多彩なワークショップを開催する「みんなの屋上庭園」として計画されています。
四季折々の果樹、野菜、ハーブを栽培し、「タネから育てて収穫・調理して、みんなで食べる」「季節の果樹のプチ収穫&畑で水やり」「野菜スタンプづくり」など様々なプログラムを年間150回程度開催し、1.5万人の受講者を集めています。
3.アーバンファーミングの効用
アーバンファーミングですが、様々な効用が想定されます。
都市部における農を通じた持続可能な生活文化として、またコミュニティ形成や防災の拠点としても有効です。都市部の緑化を推進し、ヒートアイランド現象の緩和やCO2の削減といった環境面での効果が見込めることに加えて、子どもたちの食育や食料自給率の向上、地産地消、コンポスト(堆肥化)によるフードロスの削減にも繋がります。
そして身体を使った農作業は心を和らげ、農作業を通じたコミュニティの醸成も、可能になります。生産者が料理人に農作業を教えたり、定住外国人と日本人とが交流したり、「みんなで育てて、みんなで食べたら、楽しいし美味しいよね」と言う感覚が大切です。さらに課外活動として、農漁業地域を訪れ、本格的な農業、漁業を体験する「ファームビジット」にも繋がります。
そして「身体ルネサンス」的には、「土に触れる」ことで、得られる癒しがあります。米ペンシルバニア大の実験では、気分の落ち込みや無気力状態が半減すると言う改善結果が見られました。ストレスの元となるコルチゾールの分泌が抑えられる効果だと言います。野菜の成長を見守る楽しみ、収穫の喜びなど、自給に止まらない効用があります。
「最初はミミズやクモが怖かったけれど、育てた野菜の美味しさに感動した。虫に食われた野菜も愛おしく、今では生ゴミを捨てずに畑のコンポストへ」と言う利用者コメントもあります。
何よりも「自然に対峙し、共生する姿勢」が、「地球の生物の一員としての人間(自分)」を自覚させるために有効だと考えます。
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