アート・アウト施策は、街を基点に、そこで活動する人達の複層性や多様性を理解し、心の基礎体力を高める手法です。
【内容】
街まるごとミュージアムの課題
「場所×時間×自分」で街を切り取る
シビックプライドを超えて
1.街まるごとミュージアムの課題
「街全体をミュージアムに見立てて、歴史や文化を体験してもらいながら、回遊を促そう」
街なかの神社仏閣や、文化施設を一般公開して、回遊しながら、街の魅力を再発見して貰おうという活動です。普段は入れない工房が公開されたり、アーティストによるアート展示が加わったり、ワークショップが開催される事もあります。
よくある「街まるごとミュージアム」の発想ですが、ただ鑑賞するだけでは、巨大都市の中に分散した各会場は、存在感に乏しく、回遊しても、ミュージアムのように「アガる状況」を醸成する事ができず、一過性のイベントに終わってしまいます。
「街まるごとミュージアム」には単なる「鑑賞者から参画者へ変身」させる工夫が必要なのです。
2.「場所×時間×自分」で街を切り取る
水面をカンバスにして航跡波を描きながら進む姿を、金具がスライドして布を開くファスナーに見立てた「ファスナーの船」という作品で有名な鈴木康広さんは、「見立てアーティスト」です。
日頃は見逃してしまいそうなモノや、自然現象を鋭い感性で、別のモノに見立てた作品を発表しています。
「見立てアート」というと難しく聞こえますが、言葉遊びでは「駄じゃれ」、音楽では「空耳アワー」などの遊び感覚が定着しています。
同様に回遊しながら、言葉や歌(俳句・川柳を含む)から写真や映像まで、様々な表現方法で、「街を切り取り」それを総覧してアウトプットしてみてはどうでしょうか。
「場所×時間×自分」で街を切り取る事によって、鑑賞者から参画者に変身するのです。
街なかに在る窓、壁、電線などの風景を「アート見立て」して切り取る事によって、擬人化や動物見立てに出来たり、絵画的な特別な風景として、切り取れる事におどろきます。
3.シビックプライドを超えて
このプロセスを経て、街への愛着とシビックプライドが醸成されます。
さらに、自分が気付かなかった場所の魅力や、同じ場所でも異なる見立てがある事を体感する事によって、街の魅力を複層的に感じると共に、様々な人の異なる視点を感じます。
同じ様な視点を持つ人同士の共感や、全く異なる視点を持つ人への敬意が生まれると考えます。
この活動を常設化するために、美術館(アートセンター)を中心に、研究生制度にしてみてはどうでしょうか?
街見立ての手解きをした上で、「街を研究する(遊ぶ)」という役割が与えられると、街を回遊して、表現対象を探す名目が与えられます。そして年一度の発表機会を提供することで、切磋琢磨するとともに、承認欲求が満たされます。
街の人たちに「居場所と出番」を与える事で、街なかを面白く見立てようとする人たちが街じゅうに溢れる様になると考えます。
「おもしろきこともなき世を、おもしろく住みなすものは、心なりけり」とは、幕末の志士:高杉晋作が詠んだ歌とされています。
心の基礎体力を高めることで醸成される、「面白がれる人が多いコミュニティ」が、魅力有る街を創るのではないでしょうか。
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