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ふるさと論の都市政策的課題 シンふるさと ④

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 5月7日
  • 読了時間: 4分

【内容】

  1. 地域コミュニティの持続可能性とふるさとの再定義

  2. 都市と地方の関係性の変化

  3. ナショナル・アイデンティティとふるさととの関係

  4. 環境問題と持続可能な地域づくり

  5. デジタル時代の「バーチャルふるさと」

   

 

近年、日本の都市政策において「ふるさと論」は、地域活性化やアイデンティティの視点から再評価されています。

少子高齢化や人口減少が加速する中で、都市と地方の関係を見直し、新たなふるさとの概念を確立することが求められています。

従来の「ふるさと」は生まれ育った土地を指すことが多かったのですが、現代では都市化と人口移動の影響で、物理的な故郷を持たない人が増えています。

この状況を踏まえ、都市政策における「ふるさと論」の課題を整理し、今後の方向性について考えていきます。 

 

1.地域コミュニティの持続可能性とふるさとの再定義 

従来のふるさとは、個人の出生地や成長の場としての意味を持っていました。

しかし、都市への人口流入が続く中で、地方に実家を持たない都市住民が増加し、帰省先としての「ふるさと」が失われつつあります。

これにより、新たなふるさとの在り方を模索する必要性が高まっています。

例えば、移住者を受け入れる地域コミュニティの形成や、都市住民と地方をつなぐ関係人口の創出が求められます。

また、多拠点生活の普及を促し、都市と地方を行き来しながら地域との関係を築くライフスタイルを推進することで、「ふるさと」をより柔軟に捉えることが期待されています。 

 

2.都市と地方の関係性の変化 

かつては、年末年始やお盆の「帰省」という習慣が日本社会に根付いていましたが、地方に実家がない世代が増えることで、この概念も変化しつつあります。

都市で生まれ育ち、地方に帰る必要がない人々が増える中で、都市と地方の関係を再構築することが求められます。

例えば、都市部の企業と地方自治体が連携し、地方でのリモートワークを推進することで、地方との結びつきを強化できるかもしれません。

また、観光や地域体験を通じた「新しいふるさと意識」の醸成も期待されています。 

 

3.ナショナル・アイデンティティとふるさとの関係 

グローバル化の進展により、地域アイデンティティの希薄化が指摘されています。

特に若年層においては、生まれ故郷への郷愁よりも、都市やオンライン上のコミュニティへの関心が高まっています。

この傾向の中で、ふるさとを単なる出生地としてではなく、文化的・社会的なルーツとして再定義することが求められます。

例えば、地域文化や伝統を学ぶ教育プログラムを強化し、都市部に住む人々が地方とのつながりを持ち続ける仕組みを構築することが有効です。

また、都市の中でも地域コミュニティを育成し、ふるさと的なつながりを形成することが、今後の都市政策において期待されます。 

 

4.環境問題と持続可能な地域づくり 

気候変動や環境問題が深刻化する中で、持続可能な地域づくりが重要な課題となっています。

都市と地方の環境負荷のバランスを考慮し、エコツーリズムや再生可能エネルギーの活用など、持続可能なふるさとづくりが求められます。

また、都市においても、緑地の保全や自然環境の再生を通じて「都市のふるさと」を形成する視点が不可欠です。

都市政策において、地方との協力関係を強化し、環境保全と地域振興を両立させる取り組みを推進する必要があります。 

 

5.デジタル時代の「バーチャルふるさと」 

近年、テクノロジーの発展により、物理的な「ふるさと」を持たない人々が、オンライン上で新たな郷土意識を形成する可能性が生まれています。

バーチャルコミュニティやメタバース空間を活用した「ふるさと体験」の提供は、デジタル時代に適応した新しいふるさと観を生み出す可能性があります。

例えば、地域文化をオンラインで発信する取り組みや、バーチャル観光による地域への関心喚起などが考えられます。

これにより、都市に住みながらも、地方とのつながりを維持・強化する新たな方法が模索されるのではないでしょうか。 

 

都市化と人口移動が進む現代において、「ふるさと」の概念は変化しています。

物理的な帰省先を持たない人々が増える中で、新たなふるさとの在り方を模索し、都市と地方の関係性を再構築することが求められます。

これに伴い、ふるさとを単なる郷愁の対象ではなく、文化的・社会的なアイデンティティとして捉え、地域コミュニティの持続可能性や環境保全、デジタル技術を活用した新しいふるさと形成など、多角的な視点から都市政策を見直す必要があります。

 

今後の都市政策においては、「ふるさと」の多様性を認識し、都市と地方の関係をより柔軟に設計することで、新たな価値を創造していくことが重要と言えます。

 
 
 

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