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なぜ今 文化施設コンセッションなのか? シン・コンセッション ①

【内容】

  1. 文化庁によるミュージアム改革

  2. 「文化で稼ぐ」宣言の背景

  3. 世界潮流に即したコンセッション事業

  4. 行政と民間との温度差

  5. 第三の道の模索

 

 

1.文化庁によるミュージアム改革

文化庁は、2018年(平成30年)に「社会的・経済的価値をはぐくむ文化政策への転換」を打ち出しました。

これは、簡単に言えば「文化で稼ぐ」という宣言です。

近年、ミュージアムを取り巻く環境は大きく変化しています。。

「観光立国」「地方創生」が推進され、ミュージアムの観光施設化と指定管理者制度を基軸にして、「自立採算」が強く求められるようになったのです。

監督所管も教育委員会から、首長部局への移管が求められています。

ミュージアムにおける「次世代の文化拠点としてのあり方」が、問われているのです。

 

2.「文化で稼ぐ」宣言の背景

文化行政転換の背景には、国と自治体の財政難があります。

失われた30年の間、国内総生産は560兆円前後で推移し、税収が伸び悩む中、高齢者医療費をはじめとした社会保障費が膨張し、国債発行で賄っている状況です。

文化庁の予算も、直近10年は1,200億円前後で頭打ちになっています。

地域の人口が少なくなれば、当然税収も減ります。

東京以外は人口減少傾向ですから、地方自治体の財政はさらに厳しい状況です。

国内の全博物館(博物館、美術館、動・植物園、水族館)は5,738館あり、その8割弱が国公立による設置です。

「日本の博物館総合調査(2019年)」によると、日本の博物館の典型的な姿として、敷地面先4,075㎡、建物延床面積面積1,337㎡、開館年数30年、年間入館者数5,000人という状況です。

税収が好調な時代に、いたずらに建設してしまったツケが回ってきたと言えます。

ミュージアムというハコモノの変革が急務なのです。

 

3.世界潮流に対応したコンセッション

文化庁の方針は、2015年にUNESCOが提示した「ミュージアムとコレクションの保存活用、その多様性における役割に関する勧告」を、基盤にしています。

この中では、「ミュージアムは経済的な発展、とりわけ文化産業や創造産業、または観光を通じた発展をも支援する(第2条)」と述べられています。

日本だけでなく、世界の潮流として、ミュージアムに、「文化産業や創造産業と観光などを通じて、利益を上げる事」が、求められているのです。

これからのミュージアム運営は、社会教育施設としてだけではなく、産業施設でもあるという認識が不可欠なのです。

この社会背景の中で、注目された政策が「コンセッション」です。

コンセッション事業とは、利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する事業方式です。

空港などに関しては、次々に導入実績があり、文化施設についても、これから導入を図りたいようです。

 

4.行政と民間との温度差

しかし文化施設のコンセッションは、結構難しそうです。

ある政令指定都市の、文化施設のコンセッションに関する、ヒヤリングをお手伝いしたことがあります。

街の中心部に立つ文化施設について、政策担当者が地元企業に対して、コンセッション事業の打診したところ、思わしい感触を得られなかったため、文化庁を通じて「東京の大手企業にヒヤリングしたい」という依頼でした。

私たちが紹介した、大手ディベロッパーや総合商社へのヒヤリングでも、「現行の条件では、コンセッション事業として成立が難しい」という意見が大半を占めるという結果でした。

「都市公園の区域内で、事業施設の選択肢が少ないこと」「収益事業と位置付ける隣接ホテルも、現状では文化施設との相乗効果が見込めないこと」などが、その理由として挙げられました。

従来の枠組みの中で、収益化を図ろうとする「行政」と、継続的な収益化のためには、より柔軟な運営が必要と判断する「民間」との温度差が明らかになりました。

 

5.第三の道の模索

現在の枠組みの中で、文化施設で収益を上げるには、敷地の切り売りになってしまいます。

オープンイノベーションにおける「大企業」と「スタートアップ」との間にある隙間風によく似ていると感じました。

大企業がオープンイノベーションを「出島」化させて推進しているように、この温度差・隙間を埋めていくには、一種の「特区」化が必要だと感じています。

税金を垂れ流すのではなく、敷地を収益施設に切り売りするのでもない、文化施設のハード・ソフトの見直し「特区化」によって、収益を上げる第三の道を模索したいと考えます。

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