top of page

なぜ今 スポンサードなのか?:文化施設のtoB戦略 ①

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2023年6月16日
  • 読了時間: 3分

【内容】

1.文化系集客施設における「入場料頼り」の限界

2.スポンサード市場の盛り上がり

3.集客施設におけるtoB戦略の必要性



1.文化系集客施設における「入場料頼り」の限界

一般に集客施設における「時間単価は1,000円」といわれます。

映画館の料金は2時間楽しんで2,000円程度という訳です。

シネコンなどは、デジタル化を前提にして、多彩な映画コンテンツを仕入れ、少人数体制で運営することで、収益化を可能にしています。

因みにシネコンの(初期投資を含めた)収益ラインは、1席あたり1日1回転と言われ、1,000席で年間36万人、2,000席で70万人の集客が目安になります。

Zeppなどのライブホールの場合は、スタンディングを前提に、1,000人〜3,000人がすし詰め状態になる公演によって収益化が想定されています。

平均的な博物館は入場料1,500円程度、年間来館者数は7万人で、映画館と同等以下の料金で、1/5〜1/10の集客数になり、継続性のある事業構造とは言えません。

文化施設が集客を図るため、様々なイベントを企画していますが、私には「商店街活性化」のデジャブに映ってしまいます。

あの手この手を企画する事は良いことですが、手作り感が素人っぽさになり、高度なエンタメ体験に、慣れた生活者の関心を集める事は難しく、大した効果もないまま「イベント疲れ」して取りやめになることが多いのではないでしょうか。

シネコンのようなローコスト運営や、ライブホールのようなすし詰め状態での運営が、難しい文化系集客施設では、「入場料頼り」の事業構造を見直す必要があると考えます。


2.スポンサード市場の盛り上がり

スポーツやエンタメなどのライブコンテンツ事業では、「入場料収入」だけではなく、「スポンサー収入」が大きな柱になっています。

スポンサードは、当初はライブコンテンツへの「協賛」の側面が強かったのですが、テレビなどに放映されるようになると、その視聴者に向けた「宣伝効果」を期待して、スポンサードビジネスとして、大きく発展しました。

そしてデジタル技術の進展とともに、より的確な効果測定が可能になり、進化したマーケティング手法として活用されるようになります。

世界のスポンサード市場は、7.3兆円(2018年)と言われ、直近10年間で、約1.5倍、2.5兆円の伸びを示しています。

一方 日本国内に目を向けると、Jリーグのスポンサー収入は、2013年〜2016年の間で400億円〜500億円と25%の伸びに留まっています。

同じ期間に1,200億円〜2,000億円と67%の伸びを見せるプレミアリーグと比較すると、市場規模だけでなく、成長率でも大幅に劣っていることがわかります。

日本はスポンサードに関して、まだまだ「協賛」意識の抜けない未開拓市場と言えます。


3.集客施設におけるtoB戦略の必要性

ミュージアムや劇場などの文化系集客施設は、toC対応の「入場料頼り」の事業構造を見直すべきです。

スポンサードビジネスを含むtoB戦略に向けて柔軟な運営が必要ではないでしょうか。

このような認識を元に、本シリーズでは、スポンサードに協賛意識の抜けない「未開拓」な日本市場を「可能性」と捉えて「集客施設のtoB戦略」を検討していきます。

 
 
 

最新記事

すべて表示
基本的な視点と三つの戦略 AI共創オフィス ⑥

【内容】 第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 第2章 AI時代の競争力を支える「企業文化」という内的OS 第3章 AI×文化の共創拠点としての企業オフィスとサテライトオフィスの連携     第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 生成AIの進化とリモートワークの定着により、私たちの「働く場所」の概念は大きく変わりました。 業務の多くはオンラインで完結でき、駅ナカや自宅、

 
 
 
AI時代における企業オフィスの課題と方向性 AI共創オフィス ⑤

【内容】 第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 第2章 意思決定の“軽さ”がもたらす成長の喪失 第3章 “唯一無二”の判断軸を生むのは、企業文化である     第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 現代は、AIの進化とリモートワークの普及によって、私たちの意思決定のあり方が大きく変化しています。 とりわけAIは、「優秀な常識人の標準答案」とも言うべき、整合的で倫理的かつ網羅

 
 
 
オフィス研究の変遷 AI共創オフィス ④

【内容】 第1章:管理のためのオフィス ― 生産性と効率の時代(1900〜1950年代) 第2章:人間中心のオフィス ― 働きがいと組織文化の時代(1960〜1980年代) 第3章:知識と多様性の時代 ― IT革命と新しい働き方(1990〜2010年代)     ここでオフィスの進化を先導してきた「オフィス研究」の変遷について、お整理しておきます。 第1章:管理のためのオフィス ― 生産性と効率の

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page