【内容】
アートと経済社会について考える研究会
×アートのスタートアップ・ガイドライン
エリアマネジメントの現在地
創造都市論以外の先行研究では、近年 経産省が積極的に「芸術・文化の価値」について提案しています。
1.アートと経済社会について考える研究会
経産省が主導して、アートと経済社会との適切な距離感について、企業、地域、社会をはじめ様々な観点の識者を集めて研究しました。
アートや周辺のクリエイティブ産業の発展のみならず、より広い実経済社会の課題解決・経済的発展などの経済産業的意義を整理・確認しています。
さらに文化・アートと経済社会の循環エコシステムの構築に向けた施策を検討しています。
特徴としては、「需要サイドからの検討」を重視しており、「企業・産業」「地域・公共」「流通・消費」「テクノロジー」などに類型ごとに課題を抽出し、各主体からの需要拡大とアートの効果・効能を受ける好循環・エコシステムの設計を検討しています。
企業・産業:
アートによる組織力の強化や人的資本への効果、製品への付加価値などの意義が確認されました。また各企業が保有するアートの開放・活用や、企業の遊休地をアーティストに提供することなどが提言されています。
地域・公共:
アートで地域のDNAを可視化し・共有し、地域住民のシビックプライドの醸成や域外需要の獲得などの意義が確認されました。実施に向けたガイドラインの策定などが提言されています。
流通・消費:
より多くの生活者とアートとの接点づくりの重要性が確認されました。その上で新たなアートビジネスの促進や、美大・美術館と連携してアートを用いた人的資本投資の促進が提言されています。
テクノロジー:
テクノロジーがアートに関する場所的・時間的・権威的な制約からの解放する意義が確認されました。またテクノロジーを用いたアートが、テクノロジーの危険性や潜在的な社会課題を示唆することで、その応用に対する課題を提起するなどの意義が確認されました。
2.×アートのスタートアップ・ガイドライン
上記の研究会を経て、地域におけるアートプロジェクトを実施する意義を提示し、実現
ポイント、公共空間の活用方策をまとめています。
アートが地域にもたらす様々な価値
対話や交流機会の創出
普段の生活では直接関わる機会のない人々が対話し、一緒に作業、運営することで、新しいネットワークを生み出していきます。
シビックプライドの醸成
アーティストは独自の視点で地域の課題や魅力を再発見します。表現・共有された事象を通じて、自分たちが住む土地に関心と誇りを持つようになります。
産業振興・生産性向上
芸術文化が盛んな地域は、高いスキルを身につけた人材を惹き続け、文化セクターのアイディアがイノベーションにつながることが指摘されています。
その他
[治安の改善]空き店舗など人気の少ない地域を、制作の場として活用することによって、新しい賑わいが生まれ、治安の向上に寄与することが期待されます。
[地域ブランディングの強化]地域に「特別な意味」を見出し、ブランディングにおけるアートの有効性が指摘されています。
[観光需要の獲得]アートプロジェクトを通じて、来街者が増え、特産品の需要獲得につながることが期待されます。
[不動産価値の向上]上記の効果の複合的な結果として、不動産価値が向上します。
その他にエリアマネジメントについても現状と課題について確認しておきます。
3.エリアマネジメント(以下エリマネ)の現在地
①エリマネとは
エリマネとは「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者などによる主体的な取り組み」と定義され、①イベント②環境維持・防犯・防災、③街づくりルール、④情報発信などの活動を行っています。
エリマネの現状
2016年に全国エリマネネットワークが結成され、160余りの団体が加盟して、ネットワークコミュニティの醸成、行政との対話の場、社会的な認知向上、人材育成などを行っています。
エリマネの可能性と課題
エリマネ活動は公共性が高く、地域の情報の受発信や公共空間の活用などに有効な反面、財源が不透明で、核となる開発の開業費用で賄われているのが実情です。
新たな財源として期待される日本版BIDについても、街の中での役割認知が広がらないため、進展していないのが状況です。
これらの先行研究や関連事情を踏まえて、次回では基本スタンスなどを提示します。
Comments