【内容】
東京スカイツリーのソフトインフラ開発
明確なコンセプトの有効性
ハコ・カベ・マチ+コンセプトプラットフォーム
1.東京スカイツリーのソフトインフラ開発
FIACS理事の小林洋志さんはソフト分野のプロデューサーとして、東京スカイツリープロジェクトに関わりました。
小林さんは「ブランディング」という言葉で業務内容をまとめていますが、単にロゴ・マークなどを作成して話題化するだけではなく、最終的なマネタイズにまで落とし込んでいるのです。
私は「ブランディング」を超えた「ソフトインフラ開発」だと考えています。
その業務概要を確認します。
コンセプトの策定
まず、最初に「RISING EAST」というコンセプトを策定しました。
EASTには、事業主体である東武鉄道の意味合いが含まれますが、新宿・渋谷・池袋など商業中心地の多い都心部西部エリアに対抗して「東部エリア」を盛り上げたい。さらには西洋文明に対する「東洋文明」を高揚したいという想いが込められていると言います。
このコンセプトが、プロジェクトの「目線」を上げると共に、幅広い関係者を巻き込む基盤になっていると考えます。
プレイスメディアの開発
年間数千万人の来場者が見込まれる施設全体を「プレイスメディア」として設計しています。
鉄道駅からのアプローチを中心に、視認性と演出性とを勘案してサイネージや広告スペースがレイアウトされています。
近年の単なる告知広告ではなく、 SNS上でも話題になるメディアジャックのツールとしての活用が工夫されています。
スポンサードの制度設計
プロジェクトの活動意義などを明示した上で、企業のスポンサード(一社3,000万円×10数社)を仕組んでいきました。
スポンサードの対価として、プレイスメディアの年間使用枠などを割り当てることなど、企業内での効果検証への対応にも配慮した制度設計になっています。
ライツマネジメント
世界一の自立タワーであるスカイツリーだから可能なのかもしれませんが、 CM撮影やキャラクター開発などを仕掛け、収益化してきました。
東京スカイツリーでは、これらの仕組みを設計・実施することで、年間10数億円の賃料外収入を獲得しています。
2.明確なコンセプトの有効性
東京スカイツリー以外の参考事例を例示します。
集客施設のスポンサードで最も有名なのは「東京ディズニーリゾート」で、年間500億円以上のスポンサー収入が想定されていますが、別格事例と言えるのでここでは「キッザニア」を検討します。
子ども達に「本物に限りなく近い職業・社会体験」の機会を提供するエディテイメント施設「キッザニア」も、スポンサー制度を活用しています。
現在国内3箇所に展開するキッザニアは、予約制のため各施設とも、年間80万人30億円程度を上限に運営されていますが、そのコンセプトの秀逸さと一業種一社の占有型協賛で、東京47社、甲子園では49社、福岡は34社のスポンサーを集めています。
当初想定された収益構造は、入場料50%、スポンサー収入30%、グッズ収入20%でした。
スポンサー企業はパビリオンの初期投資(2,000万円〜1億円)や維持コスト(毎年初期投資の60%程度)などを負担しています。
想定通りであれば、18億円程度のスポンサー収入になります。
体験シナリオや設備・ユニフォームなどは、スポンサー企業の方針を踏まえて制作し、企業ロゴを冠したファサードやユニフォームを着用してフランド訴求しています。
年間80万人程度の集客であっても、明確なコンセプトの元で運営されることが、企業にとってはCSRや SDGsなどによる企業価値の向上はもちろん、ブランドロイヤリティの確立や企業メッセージの訴求につながるという事例だと考えます。
3.ハコ・カベ・マチ+コンセプト・プラットフォーム化
プレイスメディアの整備では、東京スカイツリー以外に六本木ヒルズがよく活用されています。
地下鉄からのアプローチにある「メトロハット・メディア」で認知させ、「広場外周のバナーや列柱広告」で祝祭感を盛り上げ、「ヒルズカフェや大屋根プラザ」でのイベント開催までがパッケージになっているのです。
ハコ・カベ・マチが一体になって、「街丸ごとジャック」されたような演出効果が得られるように意図されています。
単に通行者に告知するだけの広告ではなく、その「街丸ごとジャック」が話題としてマスメディアに取り上げられたり、そこで体験した人たちによってSNSで拡散される事を前提に設計されているのです。
さらに加えると東京スカイツリーや六本木ヒルズが、いずれも年間数千万人の来街者で10億数円なのに対して、キッザニア80万人で約18億円となっています。
スポンサー獲得には、集客数だけでなく、より明確なコンセプトとファンを獲得できるプラットフォームになっていることが重要だということではないでしょうか。
Comments