【内容】
災害大国で生きる覚悟
日常に溶け込む「防災」
【何とかできる】安心
従来のこのシリーズでは、第10回(最終回)は、未来に向けた明るいビジョンを描くように心がけてきましたが、「防災」に関しては少し厳しそうです。
なぜなら「気候大変動時代の災害大国日本の激甚気象」が予想されるからです。
1.災害大国で生きる覚悟
名古屋大学宇宙地球環境研究所の坪木和久教授は、自然災害の被害の規模を検討する指標として、「損害保険金の支払額」を例示されています。
2020年9月の一覧表では、上位10位までの8位までが台風によるもので、第9位は「平成30年7月豪雨」になっています。
1位は「2018年の台風21号」で、関西国際空港を水没させ、近畿地方に大被害をもたらし、支払額は、1兆678億円に上ります。
実際の被害額は、この数倍になると予想されますので、一つの台風で数兆円の損害が出たことになります。
台風は日本の災害の最大要因なのです。
そして、気象庁の観測によると、日本の平均気温は、100年あたり1.24度上昇しており、台風の供給源である海水温が上昇傾向にあるのです。
結果として最大風速67m以上の「スーパー台風」の発生も予想されます。
私たちには、災害大国日本で生きる覚悟が求められます。
2.日常に溶け込む「防災」
シン防災まちづくりは、補助金があるから実施するものではなく、なくても実施しなくてはいけない活動である事を自覚する必要があります。
行政は、住民参加や地域ニーズの「旗印」にして、一方的に支援を実施する事を慎む必要がありますし、住民も、地元合意や意思決定などの「気持ち良さ」で、行政メニューの受け取りを、ゴールにすることを避ける必要があります。
住む人も変わり、街の状態も変わり、災害も変わります。
シン防災まちづくりは、そんな変化を前提にして、定期的に確認・更新していくコミュニティ活動です。
日常生活に溶け込んだ、継続的な防災活動が必要なのです。
3.【何とかできる】安心を持つ
災害大国日本における「安心」とは、地震や台風などの災害が【起きない】と言う「安心」でなはく、災害が【起きても何とかできる】「安心」だと考えます。
いつ起きるか分からない自然災害に対して、何となく「不安」を抱えて暮らすよりも、自己判断と自助で【何とかできる】、近隣共助で【何とかできる】と言う自信が、生きる実感をもたらすのではないでしょうか。
そして【何とかできる】根拠として、自分の身の回り、ご近所との程よい関わりは、日々の暮らしを彩り、人生を豊かにしてくれます。
少し前に、Googleが採用した「心理的安全性」と言う考え方が、会議での活発な意見を促し、職場の生産性を高めると言う、研究報告が話題になりました。
シン防災まちづくりにおける「心理的安全性=安心」が、そこに暮らす人たちの幸福度を高め、クオリティ・オブ・ライフの実現に寄与することにつながると考えます。
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