【内容】
「健康・医療・福祉のまちづくり」の可能性と課題
「交流・遊歩タウン」づくりの視点
1.「健康・医療・福祉のまちづくり」の可能性と課題
「健康まちづくり」は、人口減少と超高齢化の進展とともに、街づくりの中心コンセプトになりました。その背景と経緯は、下記の3点です。
① 支え手となる現役世代が減少し、社会保障費(医療費+介護費)が膨張の一途を辿るため、従来通りの病院での高齢者医療サービスの維持は困難。
② 一方「最後まで、自宅に住み続けたい」という要望も高いため、病院及び施設介護から在宅医療・在宅介護ニーズへの対応が必要。
③ 従って、「男性8年、女性12年」と言われる平均の【寝たきり期間の短縮】と、できる限り【地域で支える仕組み】が必要。
社会保障費の膨張を抑えるため、高齢者サービスの【病院・施設介護から在宅での医療・介護】にシフトしたいという国の思惑が感じられます。
つまり「健康まちづくり」とは、「高齢者の健康長寿を支えるまちづくり」だという事です。
介護予防策において、身体活動の重要性が認識されており、より多くの人たちの行動変容を促すには、ヒューマンスケールの近隣環境に、立ち寄りやすい場所や、人と人とのつながりが生まれる活動を作り、「外出・歩行を促す」方策が、有効なこと事がわかってきました。
「健康・医療・福祉の街づくり」では、都市構造のコンパクト化を進めることを基本にして、以下の5項目の留意点が挙げられています。
住民の健康意識を高め、運動習慣を身につける
コミュニティ活動への参加を高め、地域を支えるコミュニティ活動の活性化を図る
日常生活圏域(徒歩圏域)に都市機能を計画的に確保する
街歩きを促す歩行空間を形成する
公共交通の利用環境を高める
正しいのだけれど、何か腹落ちしないのは、私だけでしょうか????
2.「交流・遊歩タウン」づくりの視点
健康な街づくりの必要性は、十分理解できますし、その方向性も間違っていないと思います。
ただ「健康」は、何かをするための「条件」、あるいは何かをした「成果」であり、健康そのものを街づくりの目的に掲げるのに違和感があります。
要するに、街なかにおける、「交流・関係の機会づくり」と「楽しく快適な歩行環境づくり」の2つに集約でき、健康まちづくりとは、「交流しながら、歩くことを楽しめるコンパクトな街=交流・遊歩タウン」づくりと言えるのではないでしょうか。
その具体化に向けた提案例として、次の5点を挙げました。
ソーシャルアパート:多世代居住と社会参加を両立させる住まいづくり
福祉のコンビニ+α:多様な福祉サービスと自尊心を両立させた拠点づくり
アーバン農福連携:ゆっくりした仕事と実感・交流を両立させた働き場づくり
ヘルシーロード+AR:街歩きを「発見・表現」機会にする道づくり
健幸都市のアップデート:街の中での居場所と役割づくり
基本的には、効率追求だけでなく、「ゆっくり産業」併設型の街づくりだと言えます。
そして高齢者が、役割を担える街(=社会)は、女性や障害者など幅広い人たちが、参画しやすい「優しい社会構造」なのだと考えます。
こうした「構造」を織り込んでいくことは、損をしたくなくて、無駄を削ぎ落とし、余裕がなく、窮屈・息苦しい現代の日本社会の蘇生につながるのではないでしょうか。
「おもしろきこともなき世をおもしろく、住みなすものは、心なりけり」とは高杉晋作の言葉ですが、社会の仕組みの解きほぐしが、求められているのではないでしょうか。
「交流・遊歩タウン」づくりは、お年寄りだけでなく、誰もが元気で楽しく暮らせる「優しい未来」づくりなのです。
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